小松 京介
日本指圧専門学校 指圧科
本多 剛
指導教員(日本指圧専門学校 専任教員)
金子 泰隆
指導教員(日本指圧専門学校 専任教員)
大木 慎平
指導教員(日本指圧専門学校 専任教員)
Volunteer Shiatsu at Rekisen Marathon : Survey Report
Kyosuke Komatsu / Tsuyoshi Honda, Yasutaka Kaneko, Shinpei Oki
Abstract : The Forty-First Rekisen Marathon was held on November 29th, 2015 at Koishikawa, Bunkyo Ward. We participated as volunteer shiatsu therapists and surveyed 31 runners (24 males and 7 females) before and after treatment. The runners were asked to describe their level of fatigue and pain on a 100mm Visual Analog Scale (VAS) and circle the areas on abody diagram where they felt fatigue or pain. Volunteers from Japan Shiatsu College treated the runners with Namikoshi Standard Shiatsu for between 15 and 30 minutes depending on their chief complaint. All runners showed post-treatment improvement as measured by the Visual Analog Scale. Concerning the body area that the runners felt fatigue or pain, the top reply was the posterior region of the left thigh, and the second was the posterior region of the left lower leg. VAS improvement may have been due to increased muscle flexibility following shiatsu treatment.
Keywords: marathon, runner, survey, Visual Analog Scale, shiatsu
I.はじめに
平成 27年 11月 29日に文京区青少年対策礫川地区委員会主催、第 41回礫川マラソンが文京区小石川において開催された。この催しには、本校も礫川地域に根づいた学校として協賛し、ランナーにレース後、指圧を受けていただくボランティアを毎年行っている。そこで今回、ランナーがレース後、身体のどの部位に痛みを生じるのか、また、その症状は指圧によってどの程度改善されたのかなどを調査するためのアンケートを併せて行った。その結果を集計したので報告する。
II. 対象および方法
日 時:2015年 11月 29日(日)
場 所:学校法人浪越学園日本指圧専門学校第3実技室
対 象:第 41回 礫川マラソン参加者中、指圧を受けかつアンケートで有効回答が得られた 10代~50代の男女(男性 23名、女性 7名)
評価方法:
使用したアンケート用紙は、衞藤ら1)が第13回東京夢舞いマラソンボランティアアンケート報告で使用したものを用いた(図1、図競技終了後2)。A4版両面印刷のアンケート用紙を用い、施術前と施術後の疲労および痛みの度合いを 100mm(= 100ポイント)の長さの VAS(visual analogue scale)にて計測した。また、疲労を感じる部位並びに痛みを感じる部位を、身体イラストに丸印を記入するよう指示した。
施術方法:
指圧は日本指圧専門学校学生有志が、ランナーの主訴に応じて 15~30分の間で浪越式基本指圧2)を行った。
III. 結果
アンケートを集計した結果、VASにて疲労および痛みの度合いが減少したのは 30名中 30名(100%)であった。疲労および痛みの度合いが減少した平均ポイントは 40.9ポイントで、男性では 39.8ポイント、女性では 44.6ポイントであった。疲労および痛む部位でもっとも多かった回答は左大腿後面、次いで左下腿後面であった。尚、部位の回答は複数回答可のため、延べ 144箇所であった(表1)。
IV. 考察
今回の疲労を感じる部位並びに痛みを感じる部位の結果は、衞藤ら1)の報告同様、右側と比較して左側に多かった。浅見ら3)は中・長距離の選手の脚力はほとんど左右差が認められないことを報告しており、加えて村田ら4)は、下肢では明らかな一側優位性が認められず、評価や治療の際、下肢の利き足を考慮する必要性が少ないことを示唆している。このことから、今回、左側の痛みを訴える件数が多かったのは、脚力の左右差や利き足の影響に由来するものとは考えづらい。しかし、本大会のマラソンコースは左回りであったことなど、左足に負荷をかける要素が見受けられたこともあり、それにより右側に比べて左側に疲労や痛みが多く出現した可能性が考えられる。
また、今回すべての対象の自覚症状において改善が認められた。浅井ら5)の報告では、指圧により筋柔軟性の向上が認められており、15~ 30分の施術においても同様の効果が得られたと推察される。
今回のボランティアにおいて、アンケート調査の重要性を再認識した。今後もさまざまな活動を通じて、アンケート調査を実施していきたい。また、アンケートの内容については今後、指圧学会において共通して使用できるものの作成を検討してはどうかと考える。
V. 結語
第 41回礫川マラソン出場ランナーの 30名に対して指圧施術を行い、30名全てで疲労及び痛みの VASに改善が見られた。アンケートの結果、疲労及び痛みを感じる部位は左大腿後面が最も多かった。
参考文献
1)衞藤友親 他:東京夢舞いマラソン指圧ボランティア報告 ,日本指圧学会誌(1);p.31-34,2012
2)石塚寛:指圧療法学,p.78-126,国際医学出版,東京, 2008
3)浅見高明 他:スポーツ選手の一側優位性(左右差)の比較検討,筑波大学体育科学系紀要(4);p.99-109,1981
4)村田伸 他:上下肢の一側優位性に関する研究,西九州リハビリテーション研究(1);p.11-14, 2008
5)浅井宗一 他:指圧刺激による筋の柔軟性に対する効果,東洋療法学校協会学会誌(25);p.125-129, 2001
【要旨】
礫川マラソン指圧ボランティアアンケート報告
小松 京介/本多 剛,金子 泰隆,大木 慎平
平成 27年 11月 29日に文京区小石川で第 41回礫川マラソンが開催された。我々は本大会において、出場した 31名 (男性 24名、女性7名)のランナーに対しボランティアとして指圧施術をし、施術前後にアンケートを実施した。アンケートの内容は、疲労及び痛みの度合い を 100mmの長さの VASに記入し、疲労及び痛みを感じる部位に身体イラスト上で印をつける形式で設定した。施術方法は日本指圧専門学校学生有志がランナーの主訴に応じて 15〜 30分の間で浪越式基本指圧を行った。その結果、全てのランナーにおいて、疲労及び痛みの度合いを示す VASが施術後に改善した。また、疲労及び痛みを感じる部位で最も多かった回答は左大腿後面、次いで左下腿後面だった。VASの改善は、指圧による筋柔軟性の向上によるものであると推察される。
キーワード:マラソン、ランナー、アンケート、VAS、指圧