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東京夢舞いマラソン 指圧ボランティアアンケート報告(第2報):衛藤友親、永井努、石塚洋之

衛藤 友親
明治大学 体力トレーナー
永井 努
永井指圧治療院 院長
石塚 洋之
日本指圧専門学校 専任教員


Survey by questionnaire about volunteer Shiatsu at Tokyo Yumemai Marathon
 (The second report) : a survey report

Tomochika Etou, Tsutomu Nagai, Hiroyuki Ishizuka

Abstract : Following the survey report of the 12th Tokyo Yumemai Marathon, we conducted a survey in the form of a questionnaire at the Kagurazaka Station of the 13th Tokyo Yumemai Marathon using VAS (Visual Analogue Scale). About 97% of the respondents answered that the degree of fatigue or pain were reduced after the shiatsu treatment. Although there were some different conditions such as the weather and the number of questionnaires collected, the percentage was almost same as the last report. The number of cases with fatigue and / or pain in left leg was, however, lower than the last. It is necessary to discuss efficacy and effectiveness of shiatsu in sports fields by reviewing a format of the questionnaire and its implementation methods.


I.はじめに

 健康の保持・増進や体力の向上のみならず、ランニングを通じた人間関係を楽しむためにジョギングやマラソンを行う人は多い。

 マラソン大会に参加した市民ランナーに対し指圧を施した場合、ほとんどの人の痛みや疲労の自覚症状が改善されたのは既報の通りである。

 今回も同じ場所、同じ手法を用いてアンケート調査を実施したのでここに報告する。

II.日時

 2012年10月7日(日)

III.場所及び対象

 第13回東京夢舞いマラソン参加者中、神楽坂エイドステーション(スタートから33.892km地点)にて指圧を受け且つアンケートに回答した一般成人88名(男性57名、女性31名)。

IV.方法

 A4版両面印刷のアンケート用紙(図1,2)を用い、施術前と施術後の疲労および痛みの度合いを100mm(=100ポイント)の長さのVAS(visual analogue scale)にて、また、疲労を感じる部位並びに痛みを感じる部位を、身体イラストに丸印を記入する形式で回答して戴いた。

 尚、指圧はランナーの主訴に応じて5〜15分の間で浪越式基本指圧を中心に行った。

アンケート用紙

図1. 施術前アンケート用紙

図1. 施術前アンケート用紙

図2. 施術後アンケート用紙

図2. 施術後アンケート用紙

III.結果

 VASにて疲労および痛みの度合いが減少したのは88名中85名(97%)、増加したのは3名(3%)、変化がなかったのは0名(0%)であった。

 疲労および痛みの度合いが減少した例の平均ポイントは37ポイント、増加した例の平均ポイントは4ポイントであった。

 疲労および痛む部位でもっとも多かった回答は下腿後側左、次いで下腿後側右であった。尚、部位の回答は複数回答可のため、延べ434個所だった。

 

表1. 部位別主訴件数の左右差

表1. 部位別主訴件数の左右差

VI.考察

 今回の結果は前回の結果と比べ、主訴の多い順位や割合に大きな変化はなかったが、主訴件数の左右差は左が多かった部位が15部位から10部位に減少した。

 この原因は当日の天候が雨天だったため、より熱心なランナーが参加し、比較的ライトなランナーが不参加だったためではないかと推察する。

 根拠として、熱心なランナーほどコースの取り方やピッチによって下肢への負担が変わってくる1)ことを熟知している場合が多く、雨天のためにそのような障害予防の意識の高いランナーがスクリーニングされていた可能性が高いことが挙げられる。

 このような参加者自身の資質が結果に反映される可能性を考慮して、今後は回答用紙に競技年数の項目を追加するなど調査用紙の工夫が必要である。

 他方、天候やアンケート回収数が違うにもかかわらず、VASによる疲労および痛みの度合いが減少した例の割合とその平均ポイントは前報2)とほぼ変わっていない。

 これは指圧が対象や天候に関係なく一定の効果を出せることを示唆しており、そのメカニズムを含め今後更なる精査を進めていきたい。

VII.おわりに

 今後はより規模の大きな大会での調査を目指すべく、これまでの反省も踏まえて準備をしたい。また、施術地点や実施方法の抜本的な見直しも視野に入れ、スポーツ場面における指圧の有効性を模索したい。

VIII.参考文献

1) 川島敏生著, 栗山節郎監修:ぜんぶわかる筋肉・関節の動きとしくみ事典, p. 153, 成美堂,東京, 2012
2) 衞藤友親他:東京夢舞いマラソン指圧ボランティア報告, 日本指圧学会誌(1), p.33, 2012


【要旨】

東京夢舞いマラソン指圧ボランティアアンケート報告(第2報)
衛藤 友親, 永井 努, 石塚 洋之

 第13回東京夢舞いマラソン神楽坂エイドステーションにてVASを用いたアンケート調査を前回(第12回)に続き実施した。天候・アンケート回収数等の違いがあったが、VASにて疲労および痛みの度合いが減少した割合は前回同様およそ97%であった。しかし左側に疲労・痛みを訴えた件数は前回より減少した。調査用紙や実施方法を見直し、スポーツ場面における指圧の有効性を模索する必要がある。

キーワード:疲労軽減、スポーツ指圧、左右差