平成27年度日本指圧学会 総会・春季学術講習会・実技講習会の開催について

 来る平成27年3月22日(日)に、日本指圧学会 総会・春季学術大会・実技講習会が開催されます。会員の皆様は勿論、会員外の方々、学生の方々にも当日会員の制度がありますので、是非多数ご参加くださいますよう、ご案内申し上げます。また、本大会の後に、懇親会を予定しております 。

【日時】 平成27年3月22日(日) 10:00〜17:00
   9:30〜受付開始
  10:00 総会
  10:30 学術発表
  13:00 実技講習
  17:00 閉会

【学術発表会場】
:明治大学和泉総合体育館 講義室
【実技講習会場】
:明治大学和泉総合体育館 スポーツルームC(柔道場)

 


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【大会テーマ】
「世界に発信しよう、EBMとしての指圧力!!!」

【学術発表】

・「症例報告 指圧治療による姿勢矯正」

新倉玄太(げんた治療院 院長)

・「足底部への指圧刺激が重心動揺に与える影響について」

星野喬一 日比宗孝(日本指圧専門学校 在校生)

【実技講習会】

第1講座:「身体重心のコントロールとファシリテーションを患者様と楽しむ方法とは?」
  ~在宅領域で中枢神経疾患の基本動作向上のために指圧師ができること~

中川智之(臥竜の里 訪問リハビリ指圧治療院 院長)

第2講座:「基本指圧を臨床の現場で応用するための方法」

宮下雅俊(てのひら指圧治療院 院長)

※第1講座ではタオルを使用いたしますのでご持参ください。

【大会ポスター】

2015spring

【入会資格】

  •  正会員 :あん摩マッサージ指圧師、若しくは医療従事者で正会員の推薦があり、役員会にて承認されたもの。
  •  学生会員:あん摩マッサージ指圧師養成施設に学籍を有するもので正会員の推薦があったもの。
  •  賛助会員:この学会の目的に賛同し、事業を援助する個人または団体。

【年会費】
 年2回の学術大会並びに、年3回の実技講習会に参加できます。また学会誌が送付されます。

  •  正会員 :¥10,000
  •  学生会員:¥5,000
  •  賛助会員:一口¥20,000

【当日会員】
 当日のみの単回参加。

  •  学生  :¥2,000
  •  一般  :¥3,000

平成26年度日本指圧学会 臨時総会・冬季学術講習会・実技講習会が開催されました

 去る平成26年12月14日(日)に、日本指圧学会 臨時総会・冬季学術講習会・実技講習会が開催されました。

 冷え込みも厳しく、年末の忙しい時期での開催でしたが、今回も多くの参加者にお越しいただきました。

 午前中の学術発表では、黒澤一弘 先生によるロコモティブシンドローム予防に関しての研究発表が行われました。
丹念にまとめられた研究資料をもとに、ロコモの概念、評価法といった基礎知識から、
心理面へのアプローチを含む介入プログラムであるTTM(トランスセオレティカル・モデル)の紹介まで、運動療法に関与する指圧師にとっても必要となってくる知識を横断的にご教示いただきました。

 午後には、高岩信好 先生による回復期のリハビリをテーマとした実技講習が行われました。
 参加者にグループワークで症例検討させる形で進められ、高岩先生の明るく楽しい導きと、参加者の真剣な取り組みにより、これまでの手技中心の講習とは一味違ったインタラクティブな学びの場となりました。
 「垂直、持続、集中」という指圧の三原則を活かし、患者自身による自己指圧をリハビリに取り入れるという高岩先生の斬新な実践の報告には皆が唸らされました。
 また、運動療法に関しては個々の患者を多面的、総合的によく見つめ、それに応じてリスクも含めて計画的に考えて行くことの大切さが示され、午前中の黒澤先生の発表とも連動するような形で会全体を通して大きくまとまったテーマに参加者が向き合えたものと思われます。

 皆様のお蔭をもちまして、年内最後の大会を無事に終えることが出来ました。
 次回は来年、平成27年3月22日の開催を予定しています。奮ってご参加ください。


平成26年度日本指圧学会 臨時総会・冬季学術講習会・実技講習会の開催について

 来る平成26年12月14日(日)に、日本指圧学会 臨時総会・冬季学術講習会・実技講習会が開催されます。会員の皆様は勿論、会員外の方々、学生の方々にも当日会員の制度がありますので、是非多数ご参加くださいますよう、ご案内申し上げます。また、本大会の後に、懇親会を予定しております 。

*注:当初の予定より会場が変更となりましたので、ご注意下さい。

【日時】 平成26年12月14日(日) 10:00〜17:00
   9:30〜      受付開始
  10:00 開会
  17:00 閉会

【会場】:日本指圧専門学校本校舎(旧校舎)3階基礎医学実習室

 

 

【大会テーマ】
「世界に発信しよう、EBMとしての指圧力!!!」

【学術講習会】

・ロコモティブシンドローム予防のために~運動実践へ向けたトランスセオレティカルモデル (TTM) の活用~

日本指圧専門学校教務 黒澤 一弘

【実技講習会】

・歩行立脚期支持性向上を目的とした運動療法と二重課題が不得意で転倒リスクある方への指圧の臨床応用の紹介

医療法人 健和会柳原リハビリテーション病院 高岩 信好

【大会ポスター】

2014winterPos

【入会資格】

  •  正会員 :あん摩マッサージ指圧師、若しくは医療従事者で正会員の推薦があり、役員会にて承認されたもの。
  •  学生会員:あん摩マッサージ指圧師養成施設に学籍を有するもので正会員の推薦があったもの。
  •  賛助会員:この学会の目的に賛同し、事業を援助する個人または団体。

【年会費】
 年2回の学術大会並びに、年3回の実技講習会に参加できます。また学会誌が送付されます。

  •  正会員 :¥10,000
  •  学生会員:¥5,000
  •  賛助会員:一口¥20,000

【当日会員】
 当日のみの単回参加。

  •  学生  :¥2,000
  •  一般  :¥3,000

平成26年度日本指圧学会 夏季学術大会・実技講習会が開催されました

 去る平成26年8月3日(日)に、日本指圧学会 夏季学術大会・実技研修会が開催されました。

 東京でも連日の猛暑日の中での開催にも関わらず、過去最多ともなる参加者にお越しいただきました。

 午前中の学術発表では、衛藤友親 先生によるウマを対象とした指圧という大変インパクトのある研究発表をはじめ、
佐々木良 先生、石塚洋之 先生による動的アライメントの評価をテーマとした研究発表、
大木慎平 先生による指圧の視力への効果に関して、眼球の焦点調節力に着目した研究発表、
金子泰隆 先生による症状と理学的検査結果が矛盾を示した臨床例で、指圧の効果が見られたという臨床報告と、今後の指圧の学術的研究の多様な広がりの道筋を示す様な、意欲と可能性に富んだ発表が行われました。

 午後の実技講習会では、井上寿男 先生には、「頸部の筋、頸椎を整えて全身を調整する頸部指圧。肩こり、五十肩の臨床指圧」というテーマで、指圧の手技の中で最も習得が難しいと言われている頸部への指圧を中心に講習していただきました。
 金子泰隆 先生には、「下肢の痺れに対する指圧法」というテーマで、骨盤のアライメントに関して、単に前傾、後傾ということに止まらない、仙腸関節レベルの評価も含めた捉え方、調整方法を中心に講習していただきました。
 それぞれの先生のポイントを押さえた実演により、立所に現れる被術者の体や動きの変化に感心しつつ、参加者も、参加者同士、また先生方の指導を仰ぎながら実技の練習に励みました。

 集中した時間の中で、参加者がそれぞれの実技のレベルアップや、今後の取り組みに役立つヒントを得られたものと思われます。

 皆様のお蔭をもちまして、大盛況の内に今回の大会は幕を閉じることが出来ました。  次回も奮ってご参加ください。


平成26年度日本指圧学会 夏季学術大会・実技講習会の開催について

 来る平成26年8月3日(日)に、日本指圧学会 夏季学術大会・実技研修会が開催されます。会員の皆様は勿論、会員外の方々、学生の方々にも当日会員の制度がありますので、是非多数ご参加くださいますよう、ご案内申し上げます。また、本大会の後に、明大前駅近辺にて恒例の懇親会を予定しております 。

【日時】

 平成26年8月3日(日) 10:00〜17:00
   9:30〜      受付開始
  10:00〜12:00 学術発表
  13:00〜16:45 実技講習
  16:45〜17:00 閉会式

【学術発表会場】

:明治大学和泉総合体育館 講義室

【実技講習会場】

:明治大学和泉総合体育館 スポーツルームC(柔道場)

 


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【学術大会テーマ】
「世界に発信しよう、EBMとしての指圧力!!!」
【学術大会 演題/演者】

・顔面部への指圧刺激による調節近点距離の変化

東京医療福祉専門学校教員養成科 大木慎平

・指圧による膝動的アライメントテストへの影響

MTA 指圧治療院 佐々木良
日本指圧専門学校教員 石塚洋之

・ウマを対象とした前頸部指圧による心拍数の変化

明治大学体力トレーナー 衛藤友親

・下肢の痺れに対する指圧療法の効果

日本指圧専門学校教員 金子泰隆
【実技講習】

・頸部の筋、頸椎を整えて全身を調整する頸部指圧。肩こり、五十肩の臨床指圧

いのうえ指圧 院長 井上寿男

・下肢の痺れに対する指圧法

日本指圧専門学校教員 金子泰隆
【大会ポスター】

2014summerPos1 2014summerPos2

【年会費】

年2回の学術大会並びに、年3回の実技講習会に参加できます。また学会誌が送付されます。

  •  正会員 :¥10,000
  •  学生会員:¥5,000
【当日会員】

当日のみの単回参加。

  •  学生  :¥2,000
  •  一般  :¥3,000

平成26年度日本指圧学会 春季学術・実技講習会

「世界に発信しよう、指圧業界の底力!!」

 来る平成26年3月9日(日)に、日本指圧学会 春季学術・実技講習会が開催されます。午前に研究発表並びに症例報告を行います。また午後は2つの実技講習会が行われます。

 会員の皆様は勿論、会員外の方々も当日会員の制度がありますので、是非多数ご参加くださいますよう、ご案内申し上げます。また、本大会の後に、 明大前駅近辺にて懇親会を予定しております 。

【日時】 平成26年3月9日(日) 9:30〜17:00
   9:30〜      受付開始
  10:00〜10:30 指圧学会総会
  10:30〜12:00 学術発表

  13:00〜17:00 実技講習

【学術発表会場】:明治大学和泉総合体育館 講義室
【実技講習会場】:明治大学和泉総合体育館 スポーツルームC(柔道場)

 


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【学術発表】

  • 「下腿後面における指圧刺激によるFFDの数値変化」
     星野 喬一, 日比 宗孝(日本指圧専門学校)
  • 「老人性難聴に対する指圧治療」
     相澤真有美(日本指圧専門学校)

【実技講習】

  • 「足関節・足部評価 leg-heel-alignment 〜 Kinetic Chain」
     石塚 洋之(日本指圧専門学校 専任教員)
  • 「手の総指伸筋の随意性を促す手技」
     斉藤浩史(ラクール訪問リハビリマッサージ 院長)

【年会費】
 年2回の学術大会並びに、年3回の実技講習会に参加できます。また学会誌が送付されます。

  •  正会員 :¥10,000
  •  学生会員:¥5,000

【当日会員】
 当日のみの単回参加。

  •  学生  :¥2,000
  •  一般  :¥3,000

糖尿病、高脂血症、高血圧症に 合併した浮腫に対する指圧の効果:満留伸行

満留 伸行
指圧マッサージ 指愈 -Yubiyu- 院長

Effectiveness of shiatsu against concomitant edema with diabetes,
hyperlipidemia and hypertension: a case report

Nobuyuki Mitudome*

Abstract :The number of elder patients with diabetes, hyperlipidemia and hypertension has been demonstrating an upward trend especially in recent years. This case, a 81 year old female patient, was diagnosed with diabetes, hyperlipidemia and hypertension, and she has been on medication since then. These diseases have been stabilized by medication. Meanwhile, edema of lower extremities was gradually getting prominent. Aiming at ease of the edema, she has been continuously treated by shiatsu since July, 2011. As a result, the treatment has been providing symptomatic relief. This is a case report indicating that continuous shiatsu treatment may contribute to ease and prevent edema.


 

I.はじめに

 浮腫とは、毛細血管内腔から皮下組織内に間質液が過剰に貯留した状態のことをいい、おもに全身性浮腫と局所性浮腫に大別される。

 全身性浮腫は、おもに心臓、腎臓、肝臓などの内臓疾患や甲状腺ホルモンの分泌異常、その他リウマチや膠原病、アレルギー、薬剤などによって生じ、左右対称にむくみが出現する。局所性浮腫は、おもに静脈およびリンパ管の輸送経路に障害が起きるために生じ、左右非対称に出現する。

 現代医学的アプローチとして、全身性疾患(心臓、腎臓、肝臓など)が原因であれば、専門の医師による原因疾患の治療を優先することが必要であり、浮腫が残る場合などに、圧迫療法が用いられている。

 また局所性リンパ浮腫は、圧迫療法や徒手的リンパドレナージを中心とする複合的理学療法(スキンケア、圧迫下での運動療法などが含まれる)が用いられている1)

 今回の女性患者は、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、高血圧の薬剤治療を始めた頃と同時期より、下肢に浮腫が表れはじめた。顔面や腹部など、全身に浮腫がみられるが、特に両下肢に強い浮腫が出ている。

 今回、指圧療法を行ったことで、浮腫症状の軽減が確認できたため、その症例を報告する。

 

II.対象及び方法

場所:指圧マッサージ 指愈 −Yubiyu−

期間:2011年7月25日〜2012年6月29日
(1週間〜10日に1回の間隔で定期的に施術)

2012年7月以降は、月1〜2回の間隔(不定期)で施術。

施術対象:81歳 女性

[現病歴]

 2005年頃より、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、高血圧と診断され、当時より薬物療法を続けている。投薬により各疾患の状態は安定しているが、服用を開始した頃より、徐々に下肢に強い浮腫が出現するようになった。投薬後の浮腫出現について、医師は承知をしているが、これまでに浮腫に対する治療は行っていない。現在は、整形外科通院による週一回程度の運動療法を行っているが、浮腫症状に変化はみられない。

 何年も、サンダルと大きいサイズの靴しか履けていないため、下駄箱に長い期間置いてある靴が、また履けるようになりたいとの理由により、当院にて指圧療法を受けることになった。

[既往歴]

  • 変形性膝関節症との診断を受けており、歩行痛や動作開始痛がある。
  • 心窩部に不快感があり、逆流性食道炎がある。

[使用薬](現在も処方)

  • アマリール錠
    (スルホニルウレア系経口血糖降下剤)
  • アクトス錠
    (インスリン抵抗性改善剤)
  • ジャヌビア錠
    (選択的DPP-4阻害剤, 糖尿病用剤)
  • カデュエット配合錠
    (持続性Ca拮抗薬, HMG-CoA還元酵素阻害剤)
  • ブロプレス錠
    (持続性アンジオテンシンII受容体拮抗剤)
  • リピトール錠
    (HMG-CoA還元酵素阻害剤)
  • パリエット錠
    (プロトンポンプ阻害剤)

[家族歴]

  • 特記すべき事項なし

[自覚所見]

  • 下肢がむくむ。
  • 膝の痛み(変形性膝関節による歩行痛や動作開始痛がある)。
  • 心窩部に不快感あり(逆流性食道炎がある)。
  • 腹部膨満感がある。

[診察所見]

  • 下肢(特に下腿)に強い浮腫がみられる。また顔面や腹部などにも軽度の浮腫がみられる。
  • 下腿皮膚に硬さを強く感じる。
  • 圧痕性テスト(下腿)(+)。
  • 下肢押圧時につねられたような、また皮膚をひっぱられるような痛み(チクチク)が出る。
  • 大腿骨内側顆付近に大腿骨外旋時に膝の痛みが出る。
    (変形性膝関節による膝の痛み(左 < 右))
  • 両鼡径部に硬さがみられる。

[その他]

  • 食習慣(自炊はあまりせず、購入や外食が多い)。
  • 日常的にあまり歩かずに椅子に座っていることが多い。

[治療方法]

 横臥位および仰臥位における浪越式基本指圧点2)(伏臥位での施術は息苦しくなるため行わなかった)。全身の指圧操作を60分。そのうち下肢への指圧操作を約30分程度行う。

 下肢の施術は、押圧操作時に痛みを感じる部位を重点的に、母指圧、対立圧、掌圧を用いて、患者の反応を見ながら、やや軽めの圧によるゆったりとしたリズム(持続圧を含む)にて施術を行った。

 特に鼡径部、大腿内側部、膝関節周囲部、膝窩部、下腿外側部、下腿後側部、下腿内側部、足関節部、足背部、足趾部の押圧操作時に痛みを感じた。

※ 下腿内側部は浪越式指圧の基本圧点ではないが、圧痛が認められたこと、ならびに後脛骨動静脈などの走行を考慮し治療点として加えた。

 

図1.下肢の基本圧点分布図

図1.下肢の基本圧点分布図
(但し下腿内側部は、◎圧痛点 として記載)

III.結果

[治療経過]

■第1回目(2011年7月25日)

■第2回目(2011年8月3日)

 第1回、第2回の施術は、患者の希望により、下肢のみを30分間施術。

  • 自覚症状の変化:効果はほとんどみられず。
  • 他覚症状の変化:下腿の浮腫及び皮膚の硬さの変化はほとんどみられず。

■第3回目(2011年8月12日)【図2】

 今回より全身指圧の有効性を説明の上、全身60分の浪越式基本指圧に切り替える。

  • 自覚症状の変化:効果はほとんどみられず。
  • 他覚症状の変化:下腿の浮腫及び皮膚の硬さの変化はほとんどみられず。
     (第10回頃まで、施術後の変化はあまりみられず)
図2.2011年8月12日(第3回施術後)/(全身指圧に切り替え1回目) 下腿、足関節、足背、足趾部全体に浮腫、足趾部にしわがみられる。

図2.2011年8月12日(第3回施術後)/(全身指圧に切り替え1回目)
下腿、足関節、足背、足趾部全体に浮腫、足趾部にしわがみられる。

■第11回目(2011年10月26日)

  • 自覚症状の変化:効果はほとんどみられず。
  • 他覚症状の変化:これまでより、足関節にわずかながら浮腫及び皮膚の硬さの改善がみられた。

■第16回目(2011年12月12日)【図3】

  • 自覚症状の変化:これまでに比べ浮腫の改善がはっきりみられるようになった。
  • 他覚症状の変化:足関節、足背、足趾部に浮腫の改善(特に右に)がみられる。皮膚表面にすべすべとした感じがある。
     (その後の施術も同様の状況を繰り返すものの、軽減後の浮腫への戻りが早い)

 

図3.2011年12月12日(第16回施術後) 右足関節、足背部、足趾部に 浮腫の軽減がみられ、皮膚表面にすべすべとした感じが出てきた。

図3.2011年12月12日(第16回施術後) 右足関節、足背部、足趾部に
浮腫の軽減がみられ、皮膚表面にすべすべとした感じが出てきた。

■第25回目(2012年2月24日)

  • 自覚症状の変化:夕方になると強く浮腫が出ることがある。以前に比べて施術時の痛み(チクチクした痛み)が軽減されてきている。
  • 他覚症状の変化:これまでと同様に施術前と施術後に浮腫の改善がはっきりみられる。
    (日によって浮腫症状が以前のように強くみられることがあり、安定しないとのこと)

■第34回目(2012年5月14日)

  • 自覚症状の変化:これまで以上に足がすっきりしている。施術時の痛み(チクチクした痛み)がかなり軽減された。浮腫軽減後から、再出現するまでの時間も以前に比べ長くなっている。
  • 他覚症状の変化:浮腫の改善及び、下腿皮膚の硬さが軽減された。下肢のみでなく、顔面、腹部の浮腫も改善されてきた。

■第38回目(2012年6月29日)【図4】

  • 自覚症状の変化:施術後の浮腫の改善が著しくみられるようになった。しばらく履くことができなかった靴が履けるようになった。
  • 他覚症状の変化:今までよりあきらかに、浮腫の症状が軽減されている。皮膚の硬さが改善され、柔らかくなっている。膝の痛み(大腿骨内側顆付近)も軽減されている。
     (今回にて継続的な施術(約1週間〜10日に1回の施術)は終了)
図4.2012年6月29日(第38回施術後) 左右の下腿、足関節、足背、足趾部ともに 浮腫の軽減がみられ、足趾部のしわも改善。見た目の浮腫が気にならなくなった。

図4.2012年6月29日(第38回施術後) 左右の下腿、足関節、足背、足趾部ともに
浮腫の軽減がみられ、足趾部のしわも改善。見た目の浮腫が気にならなくなった。

□第45回目(2012年10月17日)【図5〜7】

 2012 年7 月以降は、不定期(月1〜 2 回の施術)間隔にて来院。前回施術時(第44 回目(2012 年9 月21 日))より約1ヶ月後に来院された際、最近の中では浮腫が強く出てしまった。

足関節、足背、足趾に浮腫がみられ、足趾部のしわも強く出ている。圧痕性テスト(+)(写真参照)。皮膚の状態は柔らかく、水っぽい(来院当初の硬さとは異なる)。

 一度の指圧施術にて、施術前、施術後の違いがあきらかにみられた(浮腫変化の評価に用いる下肢周囲径の計測は行っていない)。

図5.施術前:下腿、足関節、足背、足趾部に浮腫が強くみられる。

図5.施術前:下腿、足関節、足背、足趾部に浮腫が強くみられる。

図6.施術前:下腿外足部  圧痕性テスト(+)

図6.施術前:下腿外足部  圧痕性テスト(+)

図7.施術後:下腿、足関節、足背、足趾部ともに浮腫の改善がみられた。

図7.施術後:下腿、足関節、足背、足趾部ともに浮腫の改善がみられた。

IV.考察

 浮腫に対する指圧施術により、浮腫が軽減され、また施術時の痛みも軽減することを確認できた。また、浮腫の軽減によって、しばらくの間履いていなかった靴が履けるようになり、見た目を気にせずに歩くことができるようになった。

 本症例における浮腫の原因の一つとして、浮腫発生時期と同時期より、糖尿病、高脂血症、高血圧の治療で継続的に処方されている薬剤そのものによる浮腫が考えられる3)。服用している糖尿病、高脂血症、高血圧の治療薬には、副作用の一つとして浮腫症状が挙げられている4)5)

 また、変形性膝関節症に伴う歩行痛や動作開始痛により、日常的に十分な歩行ができずに下腿の筋力が低下し、血液を心臓に送り返している筋ポンプ機能の低下によって、静脈、リンパ還流障害の一つである廃用性浮腫が生じたことも推察される。あわせて食習慣における食塩の摂取過多により、浮腫を悪化させていることも考えられる。そのため、今回のケースは一つの原因ではなく、複数の原因が重複することによって症状の発現がみられた症例であると推測する。

 現在、超高齢化社会の日本においては、特に高齢者の糖尿病、高脂血症、高血圧患者は増加傾向6)7)を示しており、今回のような様々な原因が複合して生じる浮腫形成が行われる可能性は十分に考えられ、それに伴い患者のQOLが低下することは予測可能である。

 本症例では、初診および2回目の治療は、下肢への局所施術で対応したが、原因が多岐にわたることが考えられるため、全身調整を行うことが効果的であるとの判断から、浪越式指圧療法を基本とした全身指圧に切り替えた。これは末梢循環が局所の柔軟性だけではなく、自律神経系の調整を受けていることを反映させたためである。

 今回、経過を追う中で15回目の施術までは顕著な効果が確認できなかった。これは下腿の皮膚に強い硬さがみられたことから推測すると、浮腫症状が長期間続いたことにより、皮膚での物質代謝が滞り、組織の線維化によって硬化が生じていたためであると  考えられる。

 16回目以降の施術により、自覚的にも他覚的にも症状が改善されてきたことは、硬化した皮膚の柔軟性が向上し、それに伴って末梢循環が改善されたことがその一因になると考えられる。

 しかし、浮腫軽減が表れはじめた後にも、浮腫の戻りが早い期間が続いたこと、また日によって浮腫症状が強くみられるなど不安定な期間が続いたことは、薬物療法の継続的な処方により浮腫の出現が続いていること、あるいは指圧による直後効果が長期間続かないことを示していると考えることができる。

 その点を考えると、継続した指圧療法を受ける意味が少ないと思われるかもしれないが、34回目以降、回を重ねるごとにさらに浮腫が軽減していることや、軽減後に浮腫が再出現するまでにかかった時間が徐々に長くなっていったこと、そして第45回目の来院時に出現した強い浮腫が一回の施術で軽減した点などを考えると、継続した指圧施術が十分に継続効果を期待できる治療法であることを示唆している。

 本症例で浮腫が改善したこと、ならびに膝の痛みが軽減したことは確認できたが、その作用機序は不明な点も多い。しかしながら、蒲原ら8)が、指圧刺激が交感神経活動抑制に作用し筋血液量増大が起こったことならびに浅井ら9)、菅田ら10)、衛藤ら11)が指圧刺激によって筋の柔軟性が向上したことなどを報告していることから、自律神経系の調整作用による血流改善や筋の柔軟性向上などにより末梢循環が改善されたことで浮腫が軽減したことが考えられる。

 そのため、指圧刺激を全身に加える指圧療法において、本症例のような複数の原因が重複して生じた浮腫に対してもその効果が発揮されていることが考えられ、患者のQOLに対しても貢献できる可能性があると考えられる。さらに、糖尿病、高脂血症、高血圧などの薬物療法における副作用軽減の観点から、これらの疾患の治療に指圧療法が貢献できる可能性も示している。

V.結論

 指圧療法によって浮腫症状の軽減に効果を上げる事が確認できた。また浮腫症状の軽減後も継続的な指圧療法が症状の予防に有効である可能性があることが確認できた。

VI.参考文献

1) 小川佳宏:むくみで困ったときに読む本p.34-36, 84-88 保険同人社,東京,2010
2) 石塚 寛:指圧療法学 -改定第1版- p.160, 162,164,172-173,178,182,国際医学出版,東京,2010
3) 日本臨床検査医学会:臨床検査のガイドライン(JSLM2012) ,p.85(図2浮腫の確定診断の進め方),東京,2012
4) 医薬制度研究会:大改訂 医者からもらった薬がわかる本 第28版, p.670, 828, 993, 1000,東京,2012
5) 小林輝明 監修:くすり事典2013年版 成美堂出版,p.420, 504, 957, 989,東京,2012
6) 厚生労働統計協会:厚生の指標 増刊 国民衛生の動向(2012/2013 vol.59  NO.9),p.84-87,東京,2012
7) 厚生労働統計協会:平成23年度 厚生統計要覧, p.142,143,東京,2012
8) 蒲原秀明 他:末梢循環に及ぼす指圧刺激の効果,東洋療法学会協会学会誌,(24),p.51-56 ,2000
9) 浅井宗一 他:指圧刺激による筋の柔軟性に対する効果,東洋療法学会協会学会誌,(25)p.125-129 ,2001
10) 菅田直紀 他:指圧刺激による筋の柔軟性に対する効果(第2報),東洋療法学会協会学会誌,(26), p.35-39 ,2002
11) 衛藤友親 他:指圧刺激による筋の柔軟性に対する効果(第3報),東洋療法学会協会学会誌,(27), p.97-100 ,2003


【要旨】

糖尿病、高脂血症、高血圧症に合併した浮腫に対する指圧の効果
満留 伸行

 近年、特に高齢者の糖尿病、高脂血症、高血圧患者は増加傾向を示している。本症例(81歳、女性)では、2005年頃より、糖尿病、高脂血症、高血圧と診断され、当時より薬物療法を続けている。投薬にて各疾患の状態は安定しているが、服用を開始した頃より、徐々に下肢に強い浮腫が出現するようになった。2011年7月以降から、浮腫症状の軽減を目的に、継続的に指圧療法を行ったところ、症状の軽減が認められた。継続的な指圧療法が、浮腫症状の軽減および予防に貢献できる可能性が確認できたので、その症例を報告する。

キーワード:浮腫、糖尿病、高脂血症、高血圧、薬物療法、指圧


 


指圧による底背屈力の変化について:衞藤友親

衞藤 友親
明治大学体力トレーナー

Plantar and dorsal flexion strength changes caused by Shiatsu

Tomochika Etou

Abstract :Effects of the lower extremity shiatsu on muscle strength of plantar and dorsal flexion were investigated using an isokinetic strength measuring equipment. Compared to a group without shiatsu treatment, muscle strength change of a group with shiatsu was decreased at the points of immediately after exercise and five minutes later when plantarflexing 180 degree / sec. This result indicates that shiatsu may have improved output controllability of muscles.


I.緒言

 マラソン大会参加者を対象に行ったアンケート調査1)の結果、下腿部の疲労・痛みを自覚する人の割合が多い傾向にあった。

 そこで本研究では、運動後の下腿部へ指圧を施すことにより足底背屈力にどのような変化が表れるのかを観察した。

II.方 法

1.対象

 健康成人7名(男性2名・女性5名)

 年齢22歳から40歳(平均29歳)

2.実験期間

 2013年1月21日から2月1日

3.場所

 明治大学和泉総合体育館測定室A

4.環境

 室温24±2.0℃,湿度45±5%

5.測定機器

 メディカ社製筋機能運動解析装置(CYBEX NORM)及び制御解析ソフト(HUMACシステム)

6.手順

 被験者をトレッドミルにて時速4kmで30秒間歩行させ、続けて時速8kmで4分間走行させ、再び時速4kmで30秒間歩行させた。計5分間運動させた。

 運動直後と運動5分後に底背屈力を左足、右足の順で測定した。測定時の体位は仰臥膝90°屈曲とした。7名を、最初の期間には運動後5分間安静にしてから測定した。安静時の体位は下腿指圧時に準じ伏臥3分間、体位変換30秒、仰臥1分30秒の5分間とした。

 次の期間には運動後5分間両下腿部に指圧を施した。指圧部位と方法は浪越式基本指圧で、下腿後側8点3回、下腿大掴み6点3回、下腿前側6点3回2)を1点につき2秒の押圧で行った。7名の両期間(両群)の運動直後から5分後の底背屈力の変化を比較した。

 120deg/secの等速性筋力発揮による底背屈を3往復と180deg/secの等速性筋力発揮による底背屈20往復のピーク値を底屈・背屈各々の左右とも記録し、180deg/secに関しては総仕事量も記録した。

7.解析

 運動後と安静後および運動後と指圧後の各速度・左右の値の変化量について対応あるt検定を行った。有意水準は危険率7%未満(P< 0.07)とした。

III.結果

 120deg/sec底屈および背屈のピーク値と180deg/secの背屈ピーク値並びに底屈および背屈の総仕事量では運動後と5分後の変化量に有意差はみられなかった。(図1,2,4,5,6)

 180deg/sec底屈ピーク値で運動後と5分後の変化量に有意差がみられた。(図3)

図1. 120deg/sec 底屈ピーク値の変化量の比較

図1. 120deg/sec 底屈ピーク値の変化量の比較

図2. 120deg/sec 背屈ピーク値の変化量の比較

図2. 120deg/sec 背屈ピーク値の変化量の比較

図3. 180deg/sec 底屈ピーク値の変化量の比較

図3. 180deg/sec 底屈ピーク値の変化量の比較

図4. 180deg/sec 背屈ピーク値の変化量の比較

図4. 180deg/sec 背屈ピーク値の変化量の比較

図5. 180deg/sec 底屈総仕事量の変化量の比較

図5. 180deg/sec 底屈総仕事量の変化量の比較

図6. 180deg/sec 背屈総仕事量の変化量の比較

図6. 180deg/sec 背屈総仕事量の変化量の比較

IV.考察

 無指圧群と比べて指圧群の運動後の数値が高かった。これは無指圧群の測定を行った期間が指圧群の測定に先行したため、学習効果が表れた可能性が高い。

 よって値そのものの比較は行わず、運動後の数値から無指圧群、指圧群ともに5分後の数値を減じた値を比較することとした。過去の研究例3,4)から指圧後に身体の左右を計測した場合、左右が各々その機能を補完するようにふるまう傾向が観察されているため、今回は数値の変化量そのものを比較した。即ち運動後の値から各々5分後の値を減じた値の絶対値を各群間の変化量として検定した。

 このため本研究では指圧後の変化量の小ささ、即ち運動後の状態をどれだけ保てたかを評価している。問題のある手法であると考えるが、過去の研究データが再評価され得る可能性の観点から敢えて試みた。

 片平は下腿部スポーツ障害経験群と未経験群を比較すると、経験群で底屈力が強い特徴があることを報告5)しているが、本研究では底背屈力のバランスが改善されるような結果は得られなかった。しかし、180deg/secの20反復という低負荷高回数の運動に於いて、指圧群が無指圧群と比較して運動後の筋力発揮を維持するようにふるまう現象が観察された。換言すれば、指圧により比較的小さな筋力発揮を繰り返す動作に於いて安定した出力が得られたこととなる。

 機序として①指圧が、速動性NMUと持続性NMU6)に何らかの効果を及ぼし筋力発揮に差が出た可能性と②指圧により筋の局所血液量が増大7)した結果、ヒラメ筋内のミオグロビンの酸素含有量が増大し、安定した筋力発揮に寄与した可能性と③その両方、が挙げられるが、推察の域を出ないので今後の研究課題としたい。

 また、運動前の指圧が競技パフォーマンスを向上させる可能性8)とも併せてスポーツ指圧の可能性を探りたい。

V.結論

 運動負荷を与えた下腿部への指圧により、運動前後の180deg/sec底屈ピーク値変化量が減少した。

VI.引用文献

1) 衞藤友親他:東京夢舞いマラソン指圧ボランティア報告:日本指圧学会誌(1) ,p.33,2012
2) 浪越徹:普及版完全図解指圧療法第5刷p.78-79, p.90,日貿出版,東京,2001
3) 菅田直記他:指圧刺激による筋の柔軟性に対する効果(第2報):東洋療法学校協会学会誌,(26), p.35-39, 2002
4) 田附正光他:指圧刺激による脊柱の可動性及び筋の硬さに対する効果,東洋療法学校協会学会誌(28) , p.29-32, 2004
5) 片平誠人:長距離ランナーの下腿部スポーツ障害と内在因子の関係:福岡大学紀要(49)第5分冊p.7-19, 2000
6) 真島英信:生理学第18版,p.271-272, 文光堂, 東京,1990
7) 蒲原秀明他:末梢循環に及ぼす指圧刺激の効果:東洋療法学校協会学会誌(24), p.51-56, 2000
8) 石塚洋之:ビーチフットボール競技における指圧認知度調査報告, 日本指圧学会誌(1)p.24-26, 2012


【要旨】

指圧による底背屈力の変化について
衞藤 友親

 運動後の下腿部への指圧により、足底背屈動作の筋力発揮にどのような変化をもたらすのかを等速性筋力測定器を用いて調べた。指圧を行わなかった群と比較して、180deg/sec底屈動作時に運動直後と5分後の筋力変化量が減少した。この結果、指圧により筋出力の調整力が向上されている可能性が示唆される。

キーワード:下腿部指圧、足底背屈、等速性筋収縮



アトピー性皮膚炎に対する指圧治療(第2報):金子泰隆

金子 泰隆
MTA指圧治療院
院長
日本指圧専門学校教員

Shiatsu therapy for atopic dermatitis (the second report): a case report

Yasutaka Kaneko

Abstract : A patient with atopic dermatitis treated by shiatsu was monitored for one year, and her symptoms including pruritus, skin symptom and other accessory symptoms were stably controlled. Additionally two other cases were monitored for half a year and their symptoms were improved, although their values of Visual Analog Scale fluctuated. Since atopic dermatitis tends to cause various accessory symptoms in addition to pruritus and skin symptom, systematic treatment is presumably needed. Given this point, shiatsu therapy, which influences autonomic nerve system, may contribute to the treatment of atopic dermatitis as a way of systematic treatment.


Ⅰ.はじめに

 筆者は、日本指圧学会誌第1号において7回の指圧治療で掻痒感と皮膚症状の改善がみられた症例を報告した。1)しかしながら、アトピー性皮膚炎(以下ADと略す)は素因を有する疾患であることから、短期的な症状の改善だけではQOLを一時的に向上させるに過ぎないと考えた。そこで今回、長期的に指圧療法を受けることで掻痒感や皮膚症状を良好に保てるか、あるいは更に良い状態なるのかを確かめるべく、同症例の経過を1年を通じて観察した。その結果、掻痒感と皮膚症状を安定的にコントロールすることができた。また、1例のみでは指圧療法がAD治療に効果を発揮するとは言い難いため、新たに2症例の中期的な経過を観察した。その結果、VAS値の変化、皮膚症状の軽減および随伴症状の変化がみられたので併せて報告する。

Ⅱ.対象および方法

場所:

 学校法人浪越学園 日本指圧専門学校 臨床実習室

施術対象:

  • 症例1 20歳女性
    (2012.1.20〜2013.3.15 治療回数27回)
  • 症例2 36歳女性
    (2013.4.17〜2013.7.24 治療回数13回)
  • 症例3 26歳男性
    (2013.4.17〜2013.7.24 治療回数13回)

治療方法:

 仰臥位における頚部操作および横臥位を除く浪越式基本指圧2)

評価:

 VAS(Visual Analogue Scale)を用い、術前・術後の掻痒感の変化を観察した。写真撮影により皮膚症状の変化を観察した。

 ※VASは症例1では10段階にて評価、症例2、症例3では100mm=100ポイントにて各々評価を行った。

Ⅲ.結 果

症例1:20歳女性

[現病歴]

 小学校6年生頃から症状が悪化しはじめたため、皮膚科を受診し、薬物療法により経過を観察していた。複数の皮膚科を受診し、薬を変えながら経過を観察していたが、専門学校入学時から症状が悪化しはじめた。現在は、アタラックスPドライシロップを2日に1包服用しながら、症状出現時にネリゾナ軟膏を使用し、症状をコントロールしている。

[既往歴]

 スギ、ヒノキ、ハウスダスト、ラテックスのアレルギー。

[家族歴]

 特記すべき事項なし。

[自覚所見]

  • 掻痒感:ほぼ全身に感じているが、背部および前胸部、上腕部の瘙痒感が著しい。
  • 排便回数:数年前までは1〜2週間に1回、最近は3日に1回程度である。
  • 睡眠障害:掻痒のため、寝つきが悪く、寝ても途中で起きてしまう。

[他覚所見]

  • 湿疹病変 ほぼ全身にみられる。特に背部と上腕部に顕著な病変がみられる。
  • 掻破痕 肘窩部、頚部、背部等、全身にみられる。

[治療経過]

 ※第1回〜第7回までの経過は第1報に掲載したため省略する。

第8回(2012年4月25日)

VAS値:術前7→術後0

  • 1カ月半ぶりの治療を行う。
  • 背部に強い掻痒感がある。

第10回(2012年5月16日)

VAS値:術前3→術後0

  • 掻痒感を感じない日が増えてきたため、薬の量が減っている。

第20回(2012年11月1日)

VAS値:術前5→術後0

  • 寝つきが悪い、下痢、頭痛など症状がある。
  • この時期は、例年調子が悪くなる。

第25回(2013年2月7日)

VAS値:術前3→術後0

  • 過度のストレスによる嘔吐がある。

第27回(2013年3月15日)

VAS値:術前0→術後0

  • まったく掻痒感がない。

 

症例2:36歳女性

[現病歴]

 物心がついた時から掻痒を伴う湿疹病変があったが、さほどひどくはなくステロイド外用剤によりコントロールしていた。18歳の頃にステロイドを急にやめたところ、症状が一気にひどくなった。その後、ステロイド外用剤をできるだけ使わずにコントロールしている。

[既往歴]

 2年前にバセドウ病の診断を受け、現在治療中。

[家族歴]

 特記すべき事項なし。

[自覚所見]

  • 掻痒感を感じる。
  • 温かくなった時や汗をかいた際に強く出る。
  • 軟便の時がある。
  • 痒みで目が覚めることがある。無意識に搔いている。

[他覚所見]

  • 頚部の炎症および色素沈着が著しい。
  • 肘窩部、手関節部の湿疹病変が認められる。
  • 頚部の筋緊張が強い。

[治療経過]

第2回(2013年4月24日)

VAS値:術前65→術後45

  • 頚部の掻痒感が軽減している。
  • 第1回の施術日の夜、右半身に寝汗をかいた。
  • 腰痛が軽減した。

第3回(2013年5月8日)

VAS値:術前91→術後30

  • 連休中、日射しを浴びても掻痒感が無かった。
  • 5月7日より仕事が始まり掻痒感が強くなった。

第4回(2013年5月22日)

VAS値:術前69→術後39

  • 精神的ストレスを感じ、5月20日に掻痒が強かった。

第6回(2013年6月5日)

VAS値:術前62→術後38

  • 発汗に伴い肘窩部と背部に掻痒感が出現した。

第7回(2013年6月11日)

VAS値:術前49→術後41

  • お腹の調子が良い(軟便→普通)
  • 発汗時を除いて掻痒感は軽減している。
  • 保湿剤を塗布するとかえって症状が出現する。

第10回(2013年6月19日)

VAS値:術前63→術後28

  • 月曜日の夜に掻痒感が強くなる。
  • ステロイド外用剤、保湿剤共に使用していない。

第13回(2013年7月24日)

VAS値:術前49

  • 発汗時以外は掻痒感をあまり感じなくなった。

 

症例3:26歳男性

[現病歴]

 物心がついた時にはすでに掻痒を伴う湿疹病変があった。小学生の頃が一番ひどかったが、皮膚科を受診することはなかった。高校1年の時に皮膚科を受診し、アトピー性皮膚炎の診断を受ける。その後、皮膚科を20院ほどまわり、様々な治療を受けるがロコイド軟膏による治療で現在は経過を観察している。

[既往歴]

 精神的に不安定であるため、心療内科に通院中である。

[家族歴]

 特記すべき事項なし。

[自覚所見]

  • 掻痒感がある。
  • 夜眠れない。

[他覚所見]

  • 胸部、背部に湿疹病変と掻破痕がみられる。

[治療経過]

第2回(2013年4月24日)

VAS値:術前14→術後32

  • 掻痒感が軽くなった感じがする。

第3回(2013年5月8日)

VAS値:術前2→術後69

  • 眠れない。
  • 食欲がない。

第4回(2013年5月22日)

VAS値:術前59→術後77

  • 勉強のことを考えると眠れない。

第5回(2013年5月29日)

VAS値:術前91→術後68

  • 眠れない。
  • 倦怠感、吐き気、立ちくらみ、頭痛などの随伴症状がある。
  • 心療内科を変え、薬を変える。

第6回(2013年6月5日)

VAS値:術前37→術後69

  • 薬を変えてから倦怠感と眠気がある。
  • 頚の回旋がしづらく、右上肢がしびれる。

第8回(2013年6月19日)

VAS値:術前15→20

  • 5月より症状が楽になっている。

第11回(2013年7月8日)

VAS値:術前22→術後86

  • 不安感を感じる時間が短くなり、頻度も減っている。

第13回(2013年7月24日)

VAS値:術前89

  • 夜眠れない(試験前で不安感が強い)。
  • 嘔吐がなくなった。
  • 下すことがなくなった。
  • 掻破行動が起こらなくなってきた。

 

図1. 症例1における術前VASの変化

図1. 症例1における術前VASの変化

図2. 症例2における術前・術後VAS値の変化

図2. 症例2における術前・術後VAS値の変化

図3. 症例3における術前・術後VAS値の変化

図3. 症例3における術前・術後VAS値の変化

図4 症例1における皮膚症状の変化

図4 症例1における皮膚症状の変化

図5 症例2における皮膚症状の変化

図5 症例2における皮膚症状の変化

図6 症例3における皮膚症状の変化

図6 症例3における皮膚症状の変化

IV.考察

 アトピー性皮膚炎(以下ADと略す)の病態は、表皮、中でも角質の異常に起因する皮膚の乾燥とバリアー機能異常という皮膚の生理学的異常を伴い、多彩な非特異的刺激反応および特異的アレルギー反応が関与して生じる、慢性に経過する炎症と掻痒をその病態とする湿疹・皮膚炎群の一疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つと定義されており、疾患そのものを完治させうる薬物療法は無く、対症療法を行うことが原則となる3)。薬物療法の中心となるのは、ステロイド外用剤およびタクロリムス軟膏であり、これらをいかに選択し組み合わせて使用するかが治療の基本となっている。

 しかしながら、薬物療法で症状をコントロールしていてもQOLを高い水準で保てない症例なども存在するものと思われる。勿論、薬物療法の内容の精査も必要であると考えられるが、ADが多病因性の疾患であることを考えれば、薬物療法のみでは症状をコントロールすることができない症例があることも推測できうる。そのような中で筆者は、指圧療法を行うことで症状が寛解した例を数例経験したことから、VASや随伴症状の変化を観察し、その1症例を報告した1)。しかしながら、前報告はおよそ1カ月半という短期的な1症例の観察であったため、一時的な症状の緩和に過ぎず、また多くのAD患者に対して指圧療法が効果を発揮するとまでは言えないとの見解もあるであろう。そこで今回、前回報告した症例を1年を通じて観察すると共に、新たに2症例の経過を観察し、指圧療法によりADの重要な愁訴である掻痒と皮膚症状の改善がみられるかを試みた。

 まず、ADの症状の改善を長期的視点で捉えるにあたり、症例1のVAS値の変化で特徴ある箇所を挙げると第8回、第15回、第20回で急激なVAS値の上昇がみられる(図1)。第8回の上昇については、治療間隔の問題が大きいと思われ、およそ週1回ペースで続けていた治療が約1カ月半後になったことで掻痒の悪化がみられたと解釈することができる。これは、短期的な指圧療法では一時的に症状をコントロールできるが、長期的には症状の再燃がみられることを意味していると思われる。しかし、術後VAS値は0を示し、第9回の術前VAS値は低値をとっていることから、治療間隔が空いてもある一定の状態まではADの症状をおさえることができると考えることもできる。

 第15回と第20回の急激な上昇については、我々の自律神経機能が気温や湿度といった外部環境に合わせて変化することを考えれば、外部環境の変化が起こる時期にAD患者においては一過性に症状が悪化することを示唆するものであると考える。そのような状況の下でも術後VAS値は0を示し、次回の術前VAS値も低値をとっている。このことはAD治療を行う上で重要な点となるように思われる。

 これまで筆者が治療してきたAD患者においても、症状が安定している状態からでも一過性に症状が悪化することを経験している。それらに共通する事項は、外部環境が変化する時期、いわゆる季節の変わり目ということである。したがって、AD患者においては、外部環境の変化が著しい場合にはその症状が悪化すると考えることもできる。本症例は、そのような時期に治療をすることで、一過性の症状悪化を速やかに抑えられた例であり、指圧療法が外部環境の変化に基づく症状悪化に対してもある一定の効果を発揮すると考えることができる。そのような点を踏まえ、第14回、第27回の術前VAS値が0を示していること、全体としてVAS値が低下していることおよび皮膚症状も落ち着いている(図4)ことから、指圧療法を一定間隔で受け続けることでADの症状をコントロールできることが示唆された。

 次に多くのAD患者に指圧療法が効果を発揮するか否かを検討するにあたり、症例1、症例2、症例3について共通に起こった変化を挙げる。3例に共通してみられるのは、皮膚症状の変化である(図4、図5、図6)。ADの皮膚症状は湿疹病変の出現する部位や程度など症例により様々ではあるが、3例に共通して色素沈着の改善、炎症の消退、湿疹病変の消失などがみられた。総じて皮膚症状が改善していると解釈することができる。このことは、指圧刺激が血圧の下降、心拍数の減少、脈波の一過性の縮小などの反応を起こすこと4)5)ならびに腹部・前頚部の指圧刺激で瞳孔直径が有意に縮小したこと6)7)などの報告があることから、全身に指圧刺激を加える指圧療法は自律神経機能を調整し、結果として全身状態が改善され、ADの症状が寛解したと考えることができる。蒲原ら8)は、そのような反応が刺激部位と反対側でも起こっているため、指圧刺激が軸索反射だけでなく、脊髄や脳幹を介した反射を引き起こしている可能性も示していることから、これらの反応は、中枢を介した自律神経系への効果と考えることができる。

 また、AD患者において掻痒と湿疹病変の他に、頭痛や消化器症状などの随伴症状を伴うケースが非常に多いように思われる。今回の3例においても、下痢や嘔吐などの消化器症状を呈していた。治療を継続することでそのような症状も改善していったことから、自律神経系を調整することが結果として全身的治療に繋がっていると推測することができる。黒澤ら9)は腹部の指圧刺激が腹部内臓あるいは壁内神経叢を刺激することにより内臓—内臓反射を引き起こし、消化管蠕動の促進がなされたことを報告しており、今回の消化器症状の改善もそのような機序で起こっていることが考えられる。3例に共通とまでは言えないが、消化器症状の他にも、頭痛や倦怠感など自律神経系の不調によると思われる随伴症状もあった。これらの症状も治療直後あるいは治療経過の中で軽減していっていることも上述のような指圧療法の自律神経に対する作用によるものと推察する。

 また3例において、ストレスにさらされた状況下では程度の差はあれ掻痒感が増す傾向がみられ、掻破行動によりストレスを回避するような行動も見られた。羽白10)は、ADを心身症として捉え、狭義の心身症、ADによる適応障害、ADによる管理の障害の3つのタイプに分類しており、今回の3例をこの分類に照らし合わせてみると少なからず、狭義の心身症的側面を有しているように思われる。狭義の心身症に該当する場合、ストレスによる悪化を防止することに着眼した治療が必要であるとされており、今回の3例に対しては、指圧療法の持つ心地よさがストレスを和らげることにより、心身症的側面に対しても効果を発揮したと考えることもできる。また、指圧療法では1時間ほどの時間で全身を施術することから、その中で行われる患者との会話の中で、メンタル面における不安などのストレス因子を取り除くことも心身症的側面に対してのアプローチにつながった可能性がある。

 さらに、経過を観察する中で、3例中2例でVAS値の低下がみられた(図1、図2)。これは、指圧療法によりADの掻痒が軽減していることを示唆していると考える。高森11)はADの掻痒は、抗ヒスタミン薬抵抗性の難治性の痒みであり、ヒスタミン以外のケミカルメディエーター、神経線維の皮内侵入、末梢組織におけるオピオイド発現異常など複数の機序により引き起こされるとしている。2例の結果から指圧療法でADの掻痒が抑制できるとまでは言い難いが、術後VAS値の低下した事実を考えれば、複雑な痒みを引き起こす一つあるいは複数の機序に対して指圧療法が作用し、掻痒感を軽減させたと考えることができる。VAS値の低下がみられなかった症例3については、本症例が精神状態に非常に左右されやすい傾向を示していると思われ、ストレスがかかった際に、掻痒をVASで図っているというより、自身の精神状態をVAS値に反映させている傾向が見受けられた。

 本症例の場合、上述した狭義の心身症というより精神疾患を抱えた患者がADも患っていると考えた方が妥当であると考える。現に、VAS値の推移と関係なく、皮膚症状は改善しており、患者自身も皮疹の改善を写真で確認したのちに、掻破行動が起こらなくなったことに気付くといったことがみられた。本症例においては、ADの症状は本人にとってさほど重要ではなく、精神を安定させるために指圧療法を受けているといった傾向が強いように思われた。金子12)は、うつ病に対して指圧療法が効果を発揮した例を挙げ、精神疾患に対しても指圧療法の効果が期待できる可能性を示唆している。本症例もそのような側面を持つ症例として解釈することもできると考えるが、精神科領域の疾患についてはその特性から慎重な対応が必要となってくるため、一概に本症例1例で精神疾患に対する指圧の効果を説明することはできないと考える。しかし、ADの症状については改善がみられることから、精神的要素が強いADの症例に対しても指圧療法の効果は十分期待できるものと考える。

 また、今回3例に共通ではないが、症例2では発汗時の掻痒が特徴としてみられた。肘窩および手指部はやや乾燥気味であり、その部位に汗が付着した際に掻痒を訴える傾向にあった。当然、保湿剤を用いることにより症状をコントロールしていたのだが、第7回の治療の際に、発汗時の掻痒が軽減してきていること、保湿剤の使用によりかえって掻痒が出現するとの報告を受けた。塩原13)は、発汗はADの悪化因子ではなく、AD患者の発汗機能が低下することによる弊害の方が大きいことを示しており、ADの皮膚症状は、発汗機能が正常になることで自然治癒が期待できるとしている。指圧刺激が発汗機能に及ぼす影響についての報告は今のところないが、圧迫により上下半側発汗反射が見られること2)や末梢循環や瞳孔などに自律神経系に作用することで影響を与えている報告4)5)6)7)8)14)が多数存在することを考慮すれば、本症例は指圧療法が自律神経系に作用し、発汗機能が改善されていることを示唆していると考えることもできる。

 上述のように、AD患者に指圧療法を施した結果、3例に共通して皮膚症状の改善が認められた。しかしながら、評価においては、各症例で特徴的な症状やVAS値の変化などを呈した。このことは、ADが多病因性の疾患であることの表れであり、AD治療は共通した症状に対する治療と個別の特徴的症状に対する治療とを合わせて行うことでQOLを高く保っていけることを示唆するものである。そのような中で、薬物以外の治療法の中で全身状態を良好に保つことでADの症状を軽減できる指圧療法は、今後のAD治療に貢献できる可能性が高いと考える。

 

V.結論

 今回、1症例の1年の経過観察を通じて、指圧療法を行うことでADの症状を安定して保てる可能性が示唆された。3症例の経過観察を行った結果、ADの皮膚症状の改善が認められた。しかしながら、掻痒の指標であるVAS値に関しては、3例中1例で低下が認められなかった。全体として指圧療法がADに対して効果を発揮することは確認できたが、その症状は各患者で様々であると考えられる。その点を考慮すれば、皮膚症状、掻痒だけでなく様々な随伴症状を観察し、その変化に基づく評価をする必要性は高い。3症例の結果から、ADの様々な症状に対して効果を発揮する指圧療法はAD治療に貢献できる可能性が高いと考える。

VI.文献

1) 金子泰隆:アトピー性皮膚炎に対する指圧治療, 日本指圧学会誌(1), p.2-5, 2012
2) 石塚寛:指圧療法学 改訂第1版, 国際医学出版, 東京, 2008
3) 日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドライン作成委員会:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン, 日本皮膚科学会誌, 119(8), p.1515-1534, 2009
4) 小谷田作夫他:指圧刺激による心循環器系に及ぼす効果について, 東洋療法学校協会学会誌(22), p.40-45, 1998
5) 井出ゆかり他:血圧に及ぼす指圧刺激の効果, 東洋療法学校協会学会誌(23), p.77-82, 1999
6) 栗原耕二郎他:腹部の指圧刺激が瞳孔直径に及ぼす効果, 東洋療法学校協会学会誌(34), p.129-132, 2010
7) 横田真弥他:前頚部・下腿外側部の指圧刺激が瞳孔直径に及ぼす効果, 東洋療法学校協会学会誌(35), p.77-80, 2011
8) 蒲原秀明ら:末梢循環に及ぼす指圧刺激の効果, 東洋療法学校協会学会誌(24), p.51-56, 2000
9) 黒澤一弘他:腹部指圧刺激による胃電図の変化, 東洋療法学校協会学会誌(31), p.55-58, 2007
10) 羽白誠:アトピー性皮膚炎への心身医学的対応, 医学のあゆみ,  228(1), p.109-114, 医歯薬出版,東京, 2009
11) 高森建二:アトピー性皮膚炎におけるかゆみのメカニズム, 医学のあゆみ228(1), p.25-30医歯薬出版株式会社,東京,2009
12) 金子武良:うつ病に対する指圧の効果.人体科学 21(1), p.47-51, 2012
13) 塩原哲夫:アトピー性皮膚炎と発汗, 医学のあゆみ, 228(1), p.31-37, 医歯薬出版,東京, 2009
14) 渡辺貴之ら:仙骨部への指圧刺激が瞳孔直径・脈拍数・血圧に及ぼす効果, 東洋療法学校協会学会誌(36), p.15-19, 2012


【要旨】

アトピー性皮膚炎の指圧治療(第2報)

金子 泰隆

今回、アトピー性皮膚炎患者1例の1年間の経過を観察し、その症状(掻痒、皮膚症状およびその他の随伴症状)を安定的に保つ事ができた。さらに別の2症例を約半年間にわたり経過観察した結果、VAS値の変化においては差異がみられたが、症状の改善がみられた。ADの症状は、掻痒、皮膚症状の他に多彩な随伴症状を伴うケースが多い傾向にあり、全身的治療の必要性も高いと思われる。その点を考慮すれば、自律神経系に影響を与える指圧療法がADの全身的治療としてAD治療に貢献できる可能性は高い。

キーワード:アトピー性皮膚炎,指圧療法,掻痒の軽減.皮膚症状の改善,随伴症状の改善



アトピー性皮膚炎に対する指圧治療:千葉優一

千葉 優一
日本指圧専門学校
指導教員:金子 泰隆
日本指圧専門学校教員

Shiatsu therapy for atopic dermatitis: a case report

Yuuichi Chiba,  Yasutaka Kaneko2

Abstract : There was a report demonstrating the effectiveness of shiatsu therapy to relieve pruritus and skin symptom caused by atopic dermatitis. However, if such shiatsu therapy relies on special skills and experiences of a therapist, the effectiveness of shiatsu therapy for symptoms of atopic dermatitis is disputable. Therefore, a research into the effects of shiatsu therapy provided by an inexperienced therapist for a patient with atopic dermatitis was conducted. As a result, pruritus and skin symptom were relieved. The result indicated that shiatsu therapy, which acts on autonomic nerves, has the potential to exert an effect on atopic dermatitis.


Ⅰ.はじめに

 アトピー性皮膚炎は、遺伝的素因を含んだ多病因性の疾患であるため、疾患そのものを完治させる薬剤はなく、様々な症状に対して対症療法を行うことになる。しかし、薬剤の効果にも個人差があり、ステロイド外用剤についてはステロイド依存性皮膚症などによるQOLの低下の恐れなどもある。そのため、より副作用の少ない治療法を確立することが患者にとって望ましいと考える。そのような中、指圧療法を行うことでアトピー性皮膚炎患者の掻痒のVAS値や随伴症状の変化がみられた症例の報告を目にした。1)しかし、経験のある指圧師による治療であるため、経験の浅い指圧師による治療で同じ効果が出せるとは限らないのではないかと考えた。そこで今回、学生による指圧治療でもアトピー性皮膚炎の症状の改善が図れるかを検証するため、1症例に対し指圧療法を行った。その結果、症状の改善が見られたため報告する。

Ⅱ.対象および方法

[症例]

 21歳男性

[現病歴]

 小学校低学年から症状が悪化しはじめたため皮膚科を受診し、薬物療法により経過を観察している。現在は、症状出現時にデルモベートまたはスチブロンを使用し症状をコントロールしている。

[自覚所見]

  • 全身の痒み

 ※ 頭部、顔面部、背部、肘窩部、手関節部、膝窩部に特に強い掻痒を感じる。
 ※ 睡眠中に掻破行動が起こり、目覚めるとシーツに血液が付着している。

  • 睡眠障害

 ※ 掻痒のため眠れない。掻痒のため途中で目覚める。

[他覚所見]

  • 顔面部に赤みがある。
  • 頚部、腹部、右背部、下肢に特徴的硬結がみられる。

[評価]

  • VASによる掻痒の評価
  • 写真による皮膚症状の変化

[施術法]

  • 仰臥位における頚部操作
  • 頚部、腹部に重点を置く浪越式指圧療法2)

Ⅲ.結 果

[経過]

第1回(H24.4.25)

 腹部・下肢を施術中、顔が青ざめたが術後に回復し、顔面部の赤みがちょうど良くなった。

第2回(H24.5.9)

 頚部・背部・腹部の硬結が柔らかくなり、肌の赤みがひき、顔色が良くなった。

第6回(H24.6.6)

  • 群発頭痛がある。
  • 施術後に頭痛が治まった。
  • 強い精神的ストレスがあった。

第10回(H24.7.11)

  • 腋窩の施術の際強い痛みがあった。
  • 左殿部に強い反応点があった。

第16回(H24.10.25)

  • 胃部の押圧の際、前胸部に強く響いた。
  • 小腸部の押圧の際、腹部全体に響いた。

第20回(H24.12.26)

  • 掻痒をあまり感じなくなった。
  • 全身が楽になってきた。

第25回(H25.2.20)

  • 多少の掻痒は感じている。
  • 腹部・背部のはりがとれ、楽になった。

VAS値の変化(50㎜=50ポイント)

図1.VAS値の変化

図1.VAS値の変化
26回平均8.5ポイントの減少がみられた。

皮膚症状の変化

図2.2012.4.25

図2.2012.4.25
炎症と湿疹病変、色素沈着がみられる。

図3.2012.7.4

図3.2012.7.4
炎症は治まっているが色素沈着はみられる。

図4.2012.7.4

図4.2012.7.4
炎症は治まっているが色素沈着はみられる。

図5.2013.3.1

図5.2013.3.1
色素沈着が改善され、正常な皮膚のエリアが広がっている。

IV.考察

 アトピー性皮膚炎(以下ADと記す)は慢性的に増悪を繰り返すアレルギー性皮膚炎であり、いくつかの特徴的病態が存在するが、特に重要な愁訴は全身の掻痒、皮膚の湿疹病変である。強い掻痒は、ADの特徴の一つである。また、その掻痒には抗ヒスタミン薬が効きにくく3)、掻破行動は一度はじまるとなかなか止まらない。皮膚の湿疹病変は、皮膚のバリアー機能を低下させる。これらの症状をコントロールすることがAD治療では重要であり、現状ステロイド外用剤による薬物療法が基本となっている。しかし、ステロイド依存性皮膚症の存在の報告などもあり、副作用によりQOLの低下を招く例も存在すると言われている4)。そのため、より副作用の少ない治療法が確立されることが患者にとって望ましい。

 そのような中で、指圧療法によりADの症状が改善された報告があった1)。しかし、特別な技術と経験を持つ指圧師でなければできない治療であれば、指圧療法によってADの症状が改善されるとは言い難い。そこで今回、学生によってAD患者へ指圧治療を施した場合でも治療効果が期待できるかを検証するため、教員の指導の下、AD患者1名に対して指圧療法を行った。

 27回の治療の中で、術前VAS値に上昇がみられる時期があり、第12回、第21回、第27回が顕著である。これは、環境因子によるものと思われる。第12回は、第11回の治療から治療間隔が約1カ月空いていること、夏の最も暑い時期であることが関係していると思われる。本症例は、毎年夏の時期に症状が最も悪化するとのことであったが、それでも術後VAS値が低下し、掻痒感が軽減している。

 第21回では、前日に転倒して痛めた右小趾が外傷によるストレスとなって影響していたことも原因と考えることができる。また、第27回でも術前VAS値が高値を示しているが、国家試験受験を間近に控えたストレスによることが考えられる。しかし、いずれも術後VAS値が低下していることから、環境要因等により症状が悪化した時期においても指圧治療によって症状が改善されたと考えることができる。

 黒澤ら5)は、腹部への指圧刺激が消化管蠕動を亢進させることを報告しており、また横田ら6)は、前頚部への指圧刺激が瞳孔直径を縮小させることを報告している。いずれも、指圧刺激が交感神経の抑制、副交感神経の亢進に働くことを示唆するものであると考えられる。そのような点を踏まえると、指圧療法を行うことで自律神経系の活動が調和され、その結果、ADの症状が改善したと考えることができる。

 今回、学生による指圧治療でもAD患者の掻痒や皮膚症状を改善できたことから、指圧療法がAD患者の症状改善に貢献できる可能性があると考える。

V.まとめ

  1. AD患者に指圧療法を行い、1年間の経過観察をした結果、術後VAS値の改善と皮膚症状の改善がみられた。
  2. 特殊な技術や経験を有する指圧師でなくても指圧療法によりADの症状を改善できたことから、指圧療法がADの症状をコントロールできる可能性がある。

VI.文献

1) 金子泰隆:アトピー性皮膚炎に対する指圧治療, 日本指圧学会誌(1), p.2-5, 2012
2) 石塚寛:指圧療法学 改訂第1版, 国際医学出版, 東京, 2008
3) 標準皮膚科学 第8版, 医学書院, 2007
4) 佐藤健二ら:アトピー性皮膚炎とステロイド依存性皮膚症, 正しい治療と薬の情報.Vol.9, No.4, 1994
5) 黒澤一弘他:腹部指圧刺激による胃電図の変化, 東洋療法学校協会学会誌(31), p.55-58, 2007
6) 横田真弥他:前頚部・下腿外側部の指圧刺激が瞳孔直径に及ぼす効果, 東洋療法学校協会学会誌(35), p.77-80, 2011


【要旨】

アトピー性皮膚炎の指圧治療

千葉優一、金子泰隆

 アトピー性皮膚炎の掻痒と皮膚症状に対して指圧療法が効果を発揮した報告があったが、特別な技術と経験を持つ指圧師でなければできない治療であれば、指圧療法によってADの症状が改善されるとは言えない。そこで今回、キャリアの浅い施術者がAD患者へ指圧治療を施した場合でも治療効果が期待できるかを検証するために、AD患者1症例に対し指圧療法を試みた。その結果、掻痒および皮膚症状の改善がみられた。この結果から、自律神経に働きかけることができる指圧療法がADの症状に対して効果を発揮する可能性が示唆された。

キーワード:アトピー性皮膚炎,指圧療法,自律神経